※本記事は2026年8月23日放送の最終話までのネタバレを含みます。確定情報と考察を分けて記載します。

『マイ・フィクション』の最大の謎は、主人公・伊川正樹の周囲から記憶が消えたことではなく、「伊川正樹という人生そのものが誰かによって作られていた」ことでした。ABCテレビの公式情報で判明した仕組みが、ニューロヴァイス社の記憶移植技術を使う「Persona Shift program(ペルソナ・シフト・プログラム)」です。ここでは最終話までに確定した事実を土台に、計画の目的、被験者、森沼ネクスタウンの役割、黒幕と結末を整理します。

ペルソナ・シフトとは何か

確定情報として、計画は重罪を犯した受刑者の記憶を改ざんし、別人として社会復帰させる極秘プロジェクトです。単に過去を忘れさせるのではなく、氏名、家族、職業、日常の出来事まで一式の人生を与えます。伊川が真弓との結婚記念日や愛鳥ピョートルの死を鮮明に覚えていたのは、嘘をついていたからではありません。本人にとっては、移植された記憶が疑いようのない現実だったのです。

誰が別人として生きていたのか

公式ストーリーで確定している中心的な被験者は、伊川正樹として暮らす二宮祐介と、伊川真弓として暮らす石野奈々美です。奈々美は7年前に夫殺しの罪を着せられ、懲役10年の実刑判決を受けました。しかし本人の記憶を取り戻した後の説明からは、彼女が計画に組み込まれる前提となった裁判自体に冤罪の疑いがあります。香坂が担当した無期懲役囚8人も獄中から消えており、津村が殺したはずの室谷隆敏もその中に含まれていました。

香坂睦美はなぜ計画へ加わったのか

根拠がある部分として、香坂は8年前に警察上層部から協力を求められた当初、人権侵害だと強く反対しています。その後の転換には、無差別殺傷事件に巻き込まれた娘・ゆず季が関係します。第7話で香坂が二宮へ新たな協力を求め、その対象として娘を示したことから、香坂の目的は単純な出世や金銭ではありません。失われた娘の人生を記憶技術で取り戻したい、あるいは苦痛を消したいという個人的な願いが、制度への加担につながったと読めます。

第6話で二宮の記憶が戻った後も、伊川として真弓と過ごした2年間の感情は消えていません。二宮が由梨と賢人を守ろうとしながら、奈々美と津村を香坂へ差し出すように振る舞ったのは、元の人格へ完全復帰したからというより、二つの人生の責任を同時に負った結果です。玉森裕太は公式コメントで、過去と現在の記憶の演じ分けに難しさがあったと語っています。表情が急に冷たくなる場面も、単純な悪役化ではなく、守る対象を選ばされる人物の緊張として見られます。

第7話時点で未確定だった未確定部分

最終話後も未確定なのは、技術が記憶の削除・移植・上書きのどこまで可能なのか、人格を完全に元へ戻せるのか、制度上の最終責任者が誰なのかです。香坂の娘に施そうとしている処置も、第7話まででは結論が出ていません。また、二宮が奈々美と津村を本当に見捨てたのか、それとも内部から救出するための取引だったのかも断定できません。

森沼ネクスタウンが担った役割

森沼ネクスタウンは、被験者を自然に暮らさせながら管理する実験区域と考えられます。多田義孝や向井理恵が職場と近隣の両方から伊川を監視し、町が「事件件数ゼロ」を不自然なほど強調していたことも、治安の良さより計画の統制を示す描写でした。第3話で日常が一言一句同じように再現されたのは、住民が自発的に伊川を受け入れたのではなく、異変を修正する側が生活を元の脚本へ戻したからです。

ピョートルの死と復活も重要です。伊川には愛鳥を埋葬した記憶があるのに、現実の庭から亡骸は見つからず、鳥籠には生きたピョートルがいました。これは時間が巻き戻った証拠ではなく、管理側が用意した生活と移植記憶の内容に食い違いが生じた証拠です。写真、小銭入れ、同じ会話といった小道具は、記憶を完全に支配しても現実の痕跡までは消し切れないことを示します。

更生という建前が崩れた理由

計画は「犯罪者を別人にして社会へ戻す」という目的を掲げます。しかし警察官だった二宮には犯罪歴がなく、奈々美には冤罪の可能性があります。対象者を救う制度ではなく、組織に都合の悪い人間を消し、新しい人格に置き換える装置へ変質したことが分かります。本人の同意がなく、元の家族にも死を伝える方法は、更生ではなく人格の処刑に近いものです。

一方で、重罪を犯した人物から苦痛や攻撃性を取り除けば被害を減らせるという反対意見も考えられます。それでも、誰が「残す記憶」と「消す記憶」を決めるのかという問題は解決しません。室谷のような加害者の記憶を消すことで責任まで消えるなら、被害者が真相を知り、裁判を受ける権利も奪われます。作品は技術の便利さより、運用者へ集中する権力の危険を描いています。

伊川と二宮はどちらが本物か

二宮の記憶が戻った後も、伊川として真弓と過ごした2年間の感情は消えていません。二宮が由梨と賢人を守ろうとしながら奈々美と津村を香坂へ差し出すように振る舞ったのは、元の人格へ完全復帰したからというより、二つの人生の責任を同時に負った結果です。玉森裕太は公式コメントで、過去と現在の記憶の演じ分けに難しさがあったと説明しています。

伊川の記憶は人工物でも、介護士として人に接し、真弓を愛した時間は実際に存在します。奈々美も、真弓として築いた生活を偽物として捨てるだけでは救われません。計画を止めることと、そこで生まれた感情を否定しないこと。この二つを両立できるかが、サスペンスではなくラブストーリーとしての着地点になります。

最終回後に回収状況を見直す伏線

結末を確認した後は、第1話の無料検診、津村を見た時の頭痛、川への転落、身分証がすべて消えた経緯を見直したいところです。検診は健康管理ではなく、被験者の脳や記憶を定期的に監視する機会だった可能性があります。また、事件件数の日数表示は安全の記録ではなく、計画が問題なく稼働した期間を示していたとも読めます。ただし、これらは第7話までに公式が用途を断定していないため、演出上の根拠を伴う考察として区別します。最終話で説明されない伏線があっても、直ちに矛盾と決めず、人物の主観を表す小道具か、制度の具体的な手掛かりかを分けて検証する必要があります。

最終回で確定した黒幕と計画の実行者

最終話で確定した最大の反転は、二宮祐介が単なる被験者ではなく、ペルソナ・シフトの記憶処置を実行できる中核技術者だったことです。由梨、津村、奈々美、室谷らの記憶に手を加えた事実を二宮自身が認めました。警察上層部、ニューロヴァイス、香坂が制度を支えていますが、物語上「身近な黒幕」として人生を編集していたのは主人公の二宮です。

二宮は7年前、室谷に襲われた由梨の苦痛を消す際、婚約者・津村との記憶を自分との結婚生活へ置き換えました。善意だけでなく「自分だけを見てほしい」という執着があり、技術が治療から支配へ変わる瞬間を体現しています。最終的には由梨、津村、賢人の記憶から自分を消し、三人を家族として再構成しました。

ペルソナ・シフトは廃止されていない

第7話で二宮が語った「計画は廃止された」は嘘でした。最終回後も香坂が候補者の選定へ関わる意思を示し、記憶改ざんの仕組みは存続します。運用を正しい人物が管理すればよいという発想ですが、本人の同意なしに人生を編集する本質は変わりません。黒幕を一人倒して終わる話ではなく、善意を理由に制度が温存される結末です。

奈々美は娘との生活を取り戻しましたが、冤罪の法的回復や計画全体の責任追及は明示されません。二宮も逮捕や公表を選ばず、二つの家族の記憶を抱えたまま計画側へ戻ったと読めます。確定したのは家族関係の結末、未確定なのはペルソナ・シフトを誰が止めるのかという社会的決着です。

出演者の公式プロフィール

出典:ドラマ『マイ・フィクション』公式サイト公式ストーリー公式キャスト 出典補足:クランクイン!最終話報道